FFP概論① マイルの基本 ― 2つのポイントシステム

FFP

FFP( Frequent Flyer Program=航空会社のポイントサービス=マイレージサービス)について説明します。

以前、動画で紹介したところ、予想以上の反響がありました。いつか改訂版を出したいと思っていたのですが、動画化は何かと手間がかかりますので、こちらで少しずつご紹介していきます。

FFPはFrequentとあるように、もともとは航空会社が多頻度搭乗者(=お得意様)向けに始めたサービスです。Wikipediaによると、世界初のFFPはアメリカン航空が1981年に始めた「AAdvantage」 。米国の航空自由化に際し、競争力確保ための施策として導入されました。

今日ではFFPを持たない航空会社を探す方が難いほど、一般的な制度になっています。

「航空会社のマイレージ」というと、一般には「たくさん飛行機に乗って貯めることで、特典航空券と交換できるポイント」と認識されています。もちろん、間違っていません。巷にあふれる「マイルの貯め方」的な指南も、このポイントをいかに効率的に獲得するかということに主眼がおかれています。

ところが通常、FFPには2種類のポイントが存在しています。これが興味のない人には実に不可解に見え、かつ制度が複雑にしてしまっています。

2種類のポイントとは「特典航空券に交換するためのポイント」と「上級会員資格になるためのポイント」のことです。

これまた巷で「上級会員になるための方法」や「効果的な修行方法」などとされているのは、後者のポイントを効率的にためるための方策です。この2つのポイントは密接不可分な仕組みになっているのですが、あえて完全に分けて考えていきたいと思います。

「特典航空券に交換するためのポイント」

飛行機に乗ると、飛行距離に応じたポイントが付与されます。まさにmileageという言葉にふさわしいポイントです。遠くに飛べばたくさん付与されますし、近距離線では僅かしか稼ぐことができません。

また、このポイントは飛行機に乗らなくても稼ぐ方法があります。クレジットカードの利用や、他のポイントシステムからの移行が一般的ですが、その他にもキャンペーンへの登録など様々な条件をクリアすることでポイントを得ることができます。

こういった方法を活用して大量にポイントを稼ぐ人たちのことを「陸マイラー」と呼んだりします。

ポイント獲得の手段を多様にすることで、航空会社は自社会員の囲い込みを行えます。稼ぐ手段が飛行機に乗ることだけならば、主なターゲットは既存客となり、大量の会員を獲得することは困難です。ところが、日常生活でも気軽にポイントを貯められる仕組みを用意することで、潜在的な顧客を早期かつ広範囲に確保できるのです。

しかし、裏を返せば自社便にまったく乗らなくても大量のポイントを稼いでしまうことも可能です。これでは、保有ポイントの多寡で「お得意様」を見分けることは不可能です。

「上級会員になるためのポイント」

1789年、平等を求める市民によってフランスで革命がおこりました。以来、彼の国では「自由」「平等」「博愛」を標語としています。それが実現できているかどうかは別にして、そうした理念を掲げるのは自由ですからね。 我が国でも「平等」は非常に貴ぶべき価値観とされています。無論、差別などありうべからざるものとして認識されています。

当然、常に「平等」が優先されるべきではない、という場面も出てきます。この状況を見誤ると「悪平等」との誹りを免れ得ません。

現代において、もっとも身近かつ強烈に階級格差を実感できるのは空港や飛行機の中ではないでしょうか。一部の上級会員は列に並ぶ必要がなく、多額の料金を支払った上級クラスの搭乗客は広いスペースと、それなりの食事が与えられます。一方、一般旅客は列に並んでチェックイン手続きを行い、荷物を預け、列に並んでセキュリティチェックを受け、さらに列に並んで搭乗ゲートに並ぶ。10時間を超える長距離フライトでも横になることは許されず、出される食事はとりあえず航空会社が考える必要なカロリーを摂取するためのもの。

きわめて限られた空間でこれだけの差をつける仕組みは現代ではなかなかお目にかかれません。おそらく、人々が空を飛ぶ前の時代、船が大陸間移動の主役であった時代の名残も多分にあるのでしょう。

かつて空の旅は裕福な人のみに許された特権でした。ところがジェット化、そしてB747登場による大量輸送時代の幕開けにより、一般市民にも空の旅を楽しめる時代がやってきました。そこで航空会社は機内の座席を価格によって区別することで、従来からの富裕層と新しい一般層を明確に分けることにしました。

閑話休題。

航空会社は経営戦略上、「お得意様」を多く確保することが必要です。このお得意様とは「金払いがよく、高い頻度で自社便を利用する顧客」と言い換えて問題ありません。

しかし、先述した通り 「特典航空券に交換するためのポイント」の多寡ではその判別が困難になっています。そこで、金払いのいい得意客とそれ以外を区別するためのポイントシステムが必要になります。それが「上級会員になるためのポイント」です。

このポイントは原則として飛行機に搭乗した時のみ付与されます。いくら提携クレジットカードで多額の決済をしていても、いくら提携会社のサービスを多頻度で利用していても、自社のフライトを使わなければ、航空会社にとってその人たちは「お得意様」たりえないのです。

これがFFPに2つのポイントシステムが併存している理由です。

つづく

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