FFP概論③ 上級会員とは ― 付加サービス

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 上級会員は様々な不満から解放されます。しかし、上級会員に与えられる特権はそれだけではありません。航空会社は不満の解消とは別のアプローチで、得意客の満足度向上に努めています。金払いの良い多頻度搭乗客には「なくてもいいけど、あったら嬉しいサービス」が付加されます。

 まず、ラウンジ利用権です。ラウンジとは待合室のこと。航空会社は空港で独自の待合スペースを持っているのです。

パリ シャルル・ド・ゴール空港 エールフランス航空ラウンジ

 セキュリティチェックとパスポートコントロールを抜けた後、搭乗までは時間があるケースがほとんどです。免税店をひやかすのもいいでしょうが、上級会員には空港ラウンジで一息つくという選択肢が与えられています。

 国際線の場合、航空会社が用意したラウンジには時間をつぶすのに必要なものが一通りそろっています。たとえば食事。ブッフェ形式で供されるパターンが大半ですが、一部ではオーダー式のメニューも取り扱っていたりします。搭乗前の腹ごなし。機内で食べるという体験を除けば、様々な面で地上食に劣ってしまう機内食よりも、地上でそれなりのものを食べたいと考える人は少なくありません。飛行機に多頻度で乗る、金払いの良い客層なら舌も肥えているでしょう。タダ飯だからと料理に群がる乗客もいないとは言いませんが、とりあえず食は人の活動の重要な要素です。

 食べ物と並んで重要なものに飲み物というものがあります。空港ラウンジであれば、ソフトドリンくからアルコールまで、一応揃っています。

 あるいはシャワー。長距離フライトでは10時間以上を機内で過ごすことになります。職場から直接空港に来た搭乗客もいれば、空港にたどり着くまでがそもそも旅であるというような搭乗客もいます。身を清め、さっぱりした気分で飛行機に乗り込む。そんな”快適”もラウンジで提供されるサービスの代表例です。

 ラウンジによっては、長時間トランジット用の仮眠室を備えていたり、さらなる付加サービスによって搭乗客の満足度を高めえる取り組みをしている例もあります。

JALファーストクラスラウンジではjohn Lobbによる靴磨きのサービスも

 パスポートコントロールを抜けてから飛行機に搭乗するまで、場合によっては数時間の待ち時間が発生することもあります。市中物価よりも高い空港で無駄な出費をせずに、かつそれなりに静かな空間で待ち時間を過ごせるラウンジサービスは、利用者にとって大変ありがたいものなのでしょう。

 お得意様には、搭乗後に専用の挨拶が行われるケースもあります。たとえ、たまたまエコノミークラスの格安チケットで乗っていたとしても「○○様、いつもご登場ありがとうございます」とCAさんが挨拶をしてくれる”サービス”です。これはいつでも起こる一般的なサービスとも言えませんが、ある意味で極めて上級会員用っぽいサービスです。 JAL国内線で、会員レベルに応じて改札音が変わるというのは有名な事例です。

オーダー式の料理も提供するドバイ エミレーツ航空ファーストクラスラウンジ

 上級会員向けのサービスでもう1つ特徴的なものは、特典航空券用ポイントの増量でしょう。平会員と同じ条件で搭乗しても、平会員以上にポイントが付与される仕組みです。顧客を囲い込む、ロイヤリティを上げる施策として一般的です。

 さて、このように不満を取り除かれ、さらにサービスが付加される上級会員ですが、その厚遇を知り、上級会員になるために飛行機に乗る、という人たちも出てきます。世に言う修行僧という方々です。その是非は置いておくとして、それほどまでに魅力的な制度なのでしょう。

 ただ、これが魅力的に見えるのは日本のある特殊な事情が関係しています。ANAとJALは両社とも上級会員資格を半永久化できる制度を持っています。つまり、一度基準に達してしまえば、あとは飛行機にまったく乗らないとしても会費を払い続けている限り上級会員であり続けられる、というわけです。

 通常、上級会員資格には期限があります。大体の場合が1年で、その期間を過ぎれば平会員、あるいは1つ下のランクに下がるようになっています。それを防ぐためには、また同じように多頻度搭乗する必要があります。

ラウンジお決まりの写真

 上級会員制度の成り立ちを考えれば、会費による永年会員化は邪道と断じたくなりますが、あるものは仕方がありません。その制度を活用しようとする姿勢も合理的。日本で多くの修行僧が生まれ、毎年多くの上級会員が乱造されていくのは自然な流れなのです。

 仮に半永久化という施策がなくなった場合、修行するメリットは極端に小さくなります。これまで説明してきた上級会員向けのサービスは、ビジネスクラス(場合によってはプレミアムエコノミー)搭乗客には最初から付与されているものだからです。修行に掛けるコストを航空券に掛けてしまえばいい、という話です。

 つづく

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