FFP概論④ ― 航空連合とポスト航空連合

FFP
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前回

ジェット旅客機の登場により、世界はそれまでとは比較にならないほど小さくなりました。大陸間移動の手段が船しかなかった時代は目的地まで数か月、あるいは数年かけていた移動が、今では長くても十数時間で済んでしまいます。まさにIt’s a Small Worldです。

世界が小さくなったとは言え、ある航空会社が単独で世界のすべてを網羅することは不可能です。彼らも私企業として利益を追求する以上、採算の取れない路線は開設しませんし、収益性が悪化すれば路線を閉鎖をします。しかし、それでは幅広い顧客の要望に応えることはできません。顧客層を拡大するためには就航地やフライト頻度を増やさなければなりません。顧客の視点でも、様々な就航地を持つ航空会社ほど搭乗頻度も多くなるでしょう。上級会員になる上でも、上級会員を増やす上でも、ネットワークの拡充が必要です。

自社で路線を開設・維持できない場合は、他社を手を組むという手段があります。提携の仕方は様々で、多くの場合はコードシェアという手法が選ばれます。さらに発展させた共同事業(JV)といったものもあり、場合によっては資本参加もあり得ます。

コードシェアとは、他社のフライトに自社の便名を付与することです。

例えばA社001便というフライトに、B社1000便という便名を付与します。もちろん、この付与がおこなれる前も後も、実際に飛んでいるのはA社001便だけです。乗客が受けるサービスもA社によるものです。

B社はA社001便の座席のいくらかを買い取り、それを自社の顧客に自社便として販売します。これによって、B社は自社が就航していない目的地に顧客を送り届けることができます。顧客も窓口をB社に一本化できるので、手続きが簡素化されます。さらには、B社のフライトに搭乗したものとして扱われるため、上級会員になるためのポイントや特典航空券に交換するためのポイントを獲得することができます。

コードシェアからさらに発展させた提携の形にJV(共同事業)があります。簡単に言えば、複数社の財布を一緒にしてしまうというものです。たとえば2019年1月現在、日本航空とブリティッシュ・エアウェイズ、イベリア航空、フィンエアーは日欧路線および各拠点からのフライトでJVを行っています。これは、すべての収益を一元的に管理して、最終的に契約に則って各社に割り振ることになります。つまり、エアラインにはコードシェアと比べて高いコミットメントが求められますが、その反面JVの収益を拡大できれば自社の儲けも膨らみます。ただ、これは顧客視点ではコードシェアとあまり大きな違いはないかもしれません。

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航空連合 Airline alliance

20世紀の終わり、航空需要が増大と多様化、さらには自由化による競争激化の一途をたどる中、各エアラインは自社便による路線網の拡大、あるいは個社間提携よりもさらに効率的な連携を求めて、航空連合(アライアンス)を発足させました。今日3大アライアンスと呼ばれる連合の中で、最初に登場したのがスターアライアンスです。1997年、エア・カナダ、ユナイテッド航空、ルフトハンザドイツ航空、スカンジナビア航空、タイ国際航空の5社によって設立されました。99年には日本から全日本空輸(ANA)が加盟しています。

ANAがスターアライアンスに加盟した1999年、旧大英帝国の航空会社が中心となってワンワールドが結成されます。設立メンバーはアメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、カナディアン航空、キャセイパシフィック航空、カンタス航空とすべて英語圏の航空会社でした。

スターアライアンス、ワンワールドと2つの大きな航空連合が設立され、取り残された世界各地のエアラインは第3のアライアンスを結成します。スカイチームです。もう20世紀も終わりという2000年6月に、デルタ航空、エールフランス、大韓航空、アエロメヒコ航空の4社によって設立されました。

これら3つのアライアンスはその後も加盟会社を増やし、時には加盟会社が破産し、他の連合に移籍し、紆余曲折を経て現在に至ります。かつてのビジネスモデルから脱却できずに、いつまでも個社間の提携でなんとかしようとあがいた挙句、結局アライアンスに加盟し、さらにその後破綻の危機に瀕した航空会社もありました。2007年にワンワールドに加盟した日本航空という名前の会社です。

これらのほかに、格安航空会社によるバリューアライアンスや、オイルマネーを背景に独自のシステムを築こうとして頓挫したエティハドパートナーズなどのアライアンスもありますが、一般に航空連合と呼ばれるのは、これら3大アライアンスのことです。

ロンドン ヒースロー空港
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アライアンスとFFP

アライアンスの存在はFFPを考える上で非常に重要です。個社間でコードシェアを実施していない場合でも、同一アライアンス内のフライトは各社のFFPアカウントに積算されるためです。たとえば、ANAのFFP会員はANAが加盟するスターアライアンス各社のフライト実績を積算することができます。

日本人の場合、多くの人がANAかJALのFFP会員でしょう。修行という表現も、これら2社のFFPで行われることが一般的です。それだけに、ANA/JALそれぞれの路線網に加え、各アライアンスがカバーする範囲も重要になります。

アジアを例にあげれば、ANAと同じスターアライアンスに加盟する航空会社はタイ国際航空、シンガポール航空、アシアナ航空、中国国際航空、深圳航空、エバー航空、エア・インディアとANAを含めて8社あります。東アジア、中国、東南アジア、南アジアと地域的な偏りもなく、アジア全域をカバーしています。

一方、日本航空が加盟するワンワールドでは、キャセイパシフィック航空、マレーシア航空、スリランカ航空、そして日本航空の4社のみです。中東のカタール航空を含めれば5社と考えることができますが、成長著しい中国本土の航空会社は皆無で、日本と近い韓国、台湾の航空会社も加盟していません。一時はマレーシア航空が度重なる不幸に見舞われ、会社そのものが消滅するかと思われましたが、その後の改革の効果もあって現在は東南アジア唯一のワンワールド会員として頑張っています。

まだ記憶に新しいJAL破綻危機の際、スカイチームの盟主デルタ航空がJAL支援に手を挙げました。これに対抗するように、JALが加盟していたワンワールドのアメリカン航空もJALの支援を申し出ています。結果、JALはアライアンス移行などのコストを勘案してデルタの提案を受けず、さらにアメリカンなど他のエアラインによる支援も断り、会社更生法の適用を申請、新経営陣と国の支援の下再建を進めました。

ワンワールド陣営からするとJALの離脱は当時世界経済の成長エンジンであった東アジアでのシェア大幅低下につながる大問題でした。一方のデルタ航空をはじめとしたスカイチーム陣営にとっては、世界有数の市場規模でありながら加盟航空会社がないために、十分にビジネスを展開しきれなかった日本市場に攻勢をかける大きなチャンスでもあったわけです。両陣営のトップが度々来日し、自分たちのJAL支援策の有効性を訴え続けた理由でしょう。

スカイチームの優先サービス SKY PRIORITY @ブダペスト リスト・フェレンツ国際空港
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アライアンスを越えて

このような紆余曲折を経て、現在の3大アライアンスが存在していますが、ここ最近はアライアンスの枠組みだけでは考えられないような状況が現れてきています。すなわち、アライアンスを越えた提携です。

ANAはスカイチームに加盟するベトナム航空との提携を実施しました。ベトナム航空については、すでにJALとの提携関係にあったところに割って入る形で手を組んでいます。一方、JALもその意趣返しと言わんばかりに、どこのアライアンスにも加盟していなかったもののANAと提携関係にあったハワイアン航空と手を結びます。さらに、JALはスカイチームに加盟するアエロフロート・ロシア航空との提携も発表しており、加えてANAと提携関係にあるガルーダ・インドネシア航空とのコードシェアも実施しています。ガルーダはJALと提携してから1年後の2019年に、JV先をANAにするかJALにするか決定するとしています。日本の2大キャリアが天秤にかけられている状況です。

ダイナミックな変化としては、中国南方航空のスカイチーム離脱も大きな話題となりました。すでに発表されている通り、2018年12月末で同社はスカイチームを脱退します。これに先立つ2017年3月にワンワールドの盟主アメリカン航空の出資を受けることを発表しています。スカイチーム脱退後、将来的にはアメリカンと同じワンワールドに加盟するのではないかと見られています。

中国民用航空局の流れをくむ中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空は、中国国際航空がスターアライアンス、東方・南方両航空がスカイチームに所属しています(南方は脱退予定)。さらに、スターアライアンスには深圳航空が加盟しています。先述の通り、ワンワールドには香港のキャセイパシフィック航空が加盟しているものの、中国本土の航空会社は加盟していないという歪な状況でした。

これが南方航空のスカイチーム離脱(ワンワールド加盟?)で多少は是正されるかと思いきや、事態はそう単純ではありません。東アジアを代表するワンワールド加盟航空会社、我が国の名を背負う日本航空は中国東方航空と提携することになりました。

このように、アライアンス以外の航空会社との提携が非常に盛んになってきています。すでに固定化している3大アライアンスという枠組みの中では十分に路線網を広げきれなくなり、アライアンスの中で了解が取れればその外でも積極的に手を組む。そういった時代になってきています。20世紀の終わりに突如として現れ、世界の空で大きな存在感を発揮してきた航空連合は、その役割を徐々に、しかし確実に終えつつあるのかもしれません。今後は緩やかな提携群としてのアライアンスと、より個社の戦略にマッチした個別提携という形で路線網の構築が進んでいくのでしょう。

もちろん、このアライアンス以外の会社との提携は今に始まった話ではありません。例えば、日本航空は長年にわたりエールフランスと提携関係にありました。数年前までは東京・パリ線でコードシェアを結んでおり、今も日本航空はパリ・シャルルドゴール空港ではエールフランスが利用するターミナルを使っています。また、日本国内を飛ぶJALのフライトにエールフランスの便名が付与されています。

しかし、そういった提携は航空連合が出現する以前からの関係であったり、航空連合を第一として、それを補完する関係にあったように思えます。昨今の資本投入も含むアライアンスを越えた積極的な関係構築の動きはポスト航空連合の時代の到来を感じさせるのです。

JALからANAに提携先を乗り換えたベトナム航空
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最後に

このように、あるエアラインのFFP会員になるにあたっては、その会社の路線網だけに限らず、加盟する航空連合や提携会社の存在、あるいはその提携範囲などにも気を付けていく必要があります。提携をしていても、限られた路線や一部のブッキングクラスしか搭乗実績に加算されないというケースもしばしばみられます。

自分にとって最適なFFPを見つける、最適な修行方法を見つける。単純なようでいて、それなりに複雑な選択肢の連続の結果であったりします。

今後はそういった各社の概況等についてもご紹介していきたいと思います。

FFP概論 終わり

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