前回、羽田・成田の首都圏2空港と欧州各都市の直行便の概況について調べてみました。今回はその続きです。
まずは中部国際空港の状況を見てみましょう
目的地 | 航空会社 | 機材 | 座席数 | 便数/週 | 供給座席 |
---|---|---|---|---|---|
ヘルシンキ(HEL) | フィンエアー(AY) | A330-300 | 263 | 5 | 1315 |
フランクフルト(FRA) | ルフトハンザ・ドイツ航空(LH) | A340-300 | 279 | 4 | 1116 |
日本有数の経済規模を誇る中京圏の空の玄関口としては少々さみしい様子です。欧州への直行便はフィンエアーのヘルシンキ線とルフトハンザのフランクフルト線。どちらもデイリー運行ではありません。
続いて昨年、台風で連絡協が破壊された関西国際空港です
目的地 | 航空会社 | 機材 | 座席数 | 便数/週 | 供給座席 |
---|---|---|---|---|---|
ヘルシンキ(HEL) | フィンエアー(AY) | A350-900 | 297 | 7 | 2079 |
フランクフルト(FRA) | ルフトハンザ・ドイツ航空(LH) | 747-400 | 371 | 5 | 1855 |
パリ(CDG) | エールフランス航空(AF) | 787-9 | 276 | 5 | 1380 |
アムステルダム(AMS) | KLMオランダ航空(KL) | 787-9 | 294 | 6 | 1764 |
こちらも首都圏と比べるとかなり物足りなく感じます。関西経済圏の規模を考えると、もっとあってもよさそうにも思えます。
デイリー運行はフィンエアーのヘルシンキ線のみ。ルフトハンザは744という往年の名機をいまだに活用しています。海外エアラインの関空撤退が続きましたが、AF-KLMは両社とも路線を維持。どちらも新型機材の787-9を飛ばしています。燃費に優れた787の恩恵とでも言えるでしょうか。
さて、中部・関空の2空港の欧州路線を見ると、日本の2社が飛ばしていないことに気が付きます。JALは経営危機に陥った際に首都圏を含む多くの路線を運休・廃止しましたし、国際線拡大を急ぐANAもリソースはすべて首都圏、というか羽田に突っ込んでいる状況です。とりあえず、中部・関空は二の次といったところでしょう。
首都圏、中部、関空の数字が出揃ったところで、それらをまとめた数字をいくつか見てみましょう。まずはアライアンス別の状況です。
アライアンス | 供給座席 |
---|---|
ワンワールド | 17791 |
スターアライアンス | 21521 |
スカイチーム | 14555 |

やはり羽田で圧倒的な存在感を持っているスターアライアンスが全国で見ても強くなります。逆に、日本の航空会社が加盟していないスカイチームも頑張っています。スカイマークが仮にデルタの支援を受けていたら、という妄想が捗ります。
エアライン別にみてみましょう
航空会社 | 供給座席数 |
---|---|
全日本空輸(NH) | 10150 |
ルフトハンザ・ドイツ航空(LH) | 7600 |
日本航空(JL) | 7273 |
エールフランス航空(AF) | 6722 |
フィンエアー(AY) | 5473 |
KLMオランダ航空 | 3990 |
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA) | 3605 |
唯一、ANAだけが1万座席/週を超えました。疑いようもなく、すでに日本のナショナルフラッグキャリアはANAであると言えるでしょう。なにかとJALを意識するような表現を使うのは2番手根性が抜けていないようにも思えますが、ぜひこれからはJALなど気にせず世界に向けてさらに飛翔していただけたらいいのではないでしょうか。
意外だったのはフィンエアーがエールフランスよりも少ないという点です。ただ、季節によっては福岡から飛ばしたり、成田線を増便したりするので年間通してみるとおそらくエールフランス以上の存在感になるのではないでしょうか。
最後に、都市別に見てみましょう
都市 | 供給座席数 | A.T.カーニー/ グローバル都市指標ランキング |
---|---|---|
パリ | 9935 | 3 |
フランクフルト | 9882 | 29 |
ロンドン | 7924 | 2 |
ヘルシンキ | 6838 | - |
アムステルダム | 3990 | 22 |
ミュンヘン | 3558 | 32 |
参考として、米国A.T. カーニーが発表したグローバル都市調査(2018年版)のランクも載せてみました。
供給座席首位は花の都パリ。都市競争力で先行するロンドンに2000席以上離しています。JALが羽田発深夜便を開設する前は、これ以上の差があったと考えられます。ロンドンは都市としての魅力が強くても、トランジット拠点としては少々端にずれています。日本からロンドンに飛んで、そこから中・東欧に乗り継ぐというケースは多くないでしょうし、北欧に行く旅客は相当な物好きなはずです。
一方、今回引用した都市ランキングでは調査対象にすらなっていないヘルシンキは22位のアムステルダム以上の供給座席数となっています。まさにフィンエアーの戦略がドハマリした結果でしょう。距離・時間的にも北部でのトランジットは極めて効率的。地球儀を眺めていれば、モスクワやヘルシンキでのトランジットが魅力的に見えてきます。モスクワは様々な面で敬遠されそうですから、今後も日本からの主要な中継地点としてはヘルシンキが挙げられそうです。
少し気になるのはフランクフルトとミュンヘンです。ルフトハンザは従来の拠点であったフランクフルトから、一部拠点機能をミュンヘンに移管することを発表しました。今後、この2拠点、ANA風に表現すればデュアルハブをどのように活用していくのかが気になります。
現代のサグラダファミリアであるブランデンブルク国際空港が開港した際に、ルフトハンザがそれをどのように扱うかにもよるでしょう。ベルリンを拠点としていたLCC、エアベルリンは新空港の完成を見ることなく、倒産してしまいました。首都に新空港ができた時、そこにLCC風情が大きな顔をしていたらルフトハンザも面白くないでしょう。エアベルリン倒産の裏にどのような事情があったのか、妄想すると楽しくなりそうです。そんなことより、本当にこの新空港は供用開始される日が来るのでしょうか?
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